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レビュー
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近代政治哲学と宗教
先駆的業績
17世紀社会契約説における宗教論の内在的分析とその意味確定作業とは、本書が登場する以前の研究において、必ずしも十分な成果をあげ得ていないテーマの一つであった。本書は、そうした先行研究における「欠落」に対して、「宗教批判」という基礎視角の設定により、17世紀社会契約説における宗教論が、「人間の哲学」からする伝統神学への鋭い批判であったと同時に、実は、そうした新しい哲学や政治学を引照枠組としてなされる「真の宗教」像の確定作業であったことを見事に論証している。また、著者には、本書の姉妹編にあたる『ジョン・ロックの思想世界-神と人間との間-』(東京大学出版会)がある。17世紀ヨーロッパの思想世界に対するより深い理解を目指される方には、併せ読まれることを強く希望する(著者は、近頃、ジョン・ロック『完訳 統治二論』(岩波文庫)を出された)。(2011/01/21)
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近代政治哲学と宗教
【著者】加藤 節