ねこさんのページ
レビュー
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役人の生理学
痛烈な風刺
小説ではなくて役人について考察した本です。
一言で言うとめちゃくちゃ面白い!です。役人を「書類作り以外なんの能力ももたない人間」と断罪し、その無能ぶりを徹底的に暴露します。あまりに容赦なくて抱腹絶倒ものです。
しかし同時に、組織に縛られて自由の全くない役人への哀感のようなものも込められており、非常に物悲しい気分にもなりました。
現代にも通じる素晴らしい役人論です。
(小説ではないと言いましたが、バルザック・フロベール・モーパッサンの役人文学が収録されています。そういう意味でもお得です。)(2016/02/03) -
魯迅文集 1
隠れた名作
魯迅といえば「阿Q正伝」「故郷」が有名ですが、第二作品集のほうが傑作だと思います。知識人の苦悩を描いた「孤独者」などは「阿Q正伝」を遥かに上回る完成度だと思います。息苦しくなるほど悲壮ですが魯迅の魅力が凝縮されている作品集です。(2015/04/01)
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死せる魂 全3冊
ゴーゴリの最高傑作
詐欺師チーチコフが死んだ農奴を買い求める旅をします。法外な値段をふっかけられたり、手厚いけれど死ぬほど退屈なおもてなしを受けたり、殴られそうになったり、田舎の地主たちに散々な目に会います。また都会の貴族の退屈極まりない生活や、役所の堕落しきった仕事ぶりや、塵埃漂う町の景観等々、停滞した当時のロシアを余すところなく描写しきった作品です。現代の日本の閉塞感と共通する所があり非常に考えさせられます。(2013/11/19)
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【小田実全集】 アメリカ 小説3
主人公が苦手
野間宏、埴谷雄高など、一流の作家にも評価された長編小説。小田実が小説家としても並々ならぬ力量を持っていることが伺えます。
だけど自分は苦手です。主人公の商社員はアメリカの黒人差別の実態に触れて、自分の故郷で虐げられていた朝鮮人に思いを馳せるのですが、心の奥のどこかで朝鮮人や黒人を差別しているとしか思えません。
また「黒人の娼婦を抱いた後、体を洗わず君と寝た」と白人の彼女に言って傷つけたりします。その他にもアンモラルなセックス描写があって女性蔑視的な感じがしました。
出世街道を捨てる覚悟で差別反対運動に身を投ずるけど、自分の醜さ身勝手さ弱さを全然克服しておらず、根本的に何も変わってない気がします。(2013/04/05)
復刊リクエスト投票
純粋理性批判 1~4 (講談社学術文庫版)
【著者】イマヌエル・カント 著 / 天野貞祐 訳
南京大虐殺の証明
【著者】洞富雄
泥と炎の沖縄戦
【著者】ユジーン・B.スレッジ
ギリシア喜劇1,2
【著者】アリストパネス
愛生
【著者】光田健輔
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