2002.1.13
株式会社ブッキング 左田野 渉

年末の10大ニュースで「8月の砲声事件」が起きたとお伝えいたしました。
そして事件は完結いたしました。堂々投票第2位となった本書は、遂に筑 摩書房から復刊されたのです。この歴史的名ノンフィクションが、再びに 日本で出会えるようになった幸せを思います。情熱を持って、協力を頂い た筑摩書房の平井さん、ありがとうございました。
 ↓
http://www.fukkan.com/fk/VoteDetail?no=2311

ご承知のように、この書籍はニュースキャスターである鳥越俊太郎氏が、 糸井重里氏の主宰する人気インターネットサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の 中の「3分間で、最近のニュースを知る。鳥越俊太郎の「あのくさ こればい!」に紹介されたのがきっかけです。
 ↓
http://www.1101.com/torigoe/

氏によれば、本書は以下の通り、その意義を紹介されています。
本書を紹介して下さった鳥越さん、そしてその復刊に寄せて復刊ドットコム をご紹介下さった方に御礼申し上げます。




*******************************

第660回

ほぼ日編集部様

12月7日のニュースから

朝日新聞には時にいい記者がいる。
今日の37面に「テロ後世界は ワシントン」
というコラムがあった。
外岡秀俊記者。
高名な記者と言っていいだろう。
今日の「『自制』問われる時」と題する記事は
読むに値するいい記事だった。
コラムの主旨は現在のブッシュ政権の、
この先の不透明さと危うさを鋭く指摘したものだ。
今、ワシントンでは、
関心を集めているのはアフガンではなく、
次の標的としてのイラク攻撃の問題だというところから
書き出されているのだが、
ブッシュ政権の危うさを浮き彫りにするのに
一冊の本が使われている。
この手法がなかなか心憎いんだね。
こういう風に書き始める。
「一冊の本が、歴史を変えることがある」
こういう文章はうまく行けばいいんだが、
下手すると失敗してしまうこともある。
まあ、手だれにしか使えない文章のテクニックだね。
この後にはこういう文章が続く。

「米国の歴史家バ−バラ・タックマンが
 62年に出版した『8月の砲声』がその例だ。
 第一次大戦を描いたその本は、一発の砲声をきっかけに
 大国の思惑や誤算が重なり、
 世界が雪崩のような大戦に巻き込まれる様子を活写した。
 本を読んだケネディ大統領は、
 側近を呼んで陸軍の全将校が読むよう指示した。 
 世界中の米軍基地に、『8月の砲声』が送られた。
 その年10月、ケネディはソ連がキューバに
 中距離ミサイルを配備したことを知らされた。
 『キューバ危機』である」

この時は例の映画「13days」で表現されたように
軍部は基地を空爆するよう主張。
ケネディは海上封鎖で対抗しようとするが、
すでにキューバに運び込まれたミサイルを
ソ連が使う可能性があり、
アメリカ国内は空爆強硬派が勢いを増した。
その時だ・・・・コラムはこう書く。

「その時『8月の砲声』がケネディの念頭をかすめた。
 弟のロバート・ケネディ司法長官の回想録によると、
 大統領は数人の側近に
 『8月の砲声』の話をしてこういった。
 『当時の指導者は、愚かさや誤算から
 世界戦争に突入した。大きな危険は計算を誤ることだ』」

結局ケネディは内密に
トルコの米ミサイル撤去を条件に持ち出し、
キューバからミサイルを撤去させた。
強硬姿勢と外交による世界戦争からの回避だった。
北朝鮮の核開発疑惑の時も、時の国防長官、ペリー氏も
『8月の砲声』に触れ、
この時はカーター元大統領が平壌訪問をして
危機を回避したという。

私はこの本のことは知らなかった。
手に入れば読んでみたいが、
アメリカの大統領や高官にここまで影響を与えた本は
そうはないだろう。
コラムによれば、今のブッシュ政権では
パウエル国務長官が
慎重にアフガン戦線に集中させてきたが、
政権内部にはイラク攻撃を求める声が強いんだそうだ。
それを抑止する指導力は
ブッシュ大統領にはないんだという。
歴代政権の研究をしてきたアメリカ大の
ジェ−ムズ・サ−バ−教授はこう言っているという。
「今政権で発言力があるのは
 チェイニー副大統領とラムズフェルト国防長官だ。
 国防長官は週に一度、諮問会議を開いているが、
 イラク攻撃について今、意見はまっ二つに割れている」

コラムの最後は雑誌『ネーション』のワシントン担当、
デービッド・コ−ン氏のこの言葉で締めくくられている。
「パウエルは国際連帯を思んじる立場だろう。
 だが、だれが大統領に歩み出て
 『8月の砲声』を読むべきだと進言するか、
 今はだれも分らない」

せめてブッシュ政権が『8月の砲声』を
読んでみるくらいの余裕があればいいのだが、
今のところはそれはなさそうだ。
と、いうことは今後アメリカ主導の世界戦略には
かなりの危うさが付きまとうことになる。
つまり、大きな賭けに米政権が出てしまう危険性を
常に秘めているということを意味する。
そう思ってもいいだろうなあ。
でもさ、ブッシュさんは
たとえその本『8月の砲声』を読んだとしても、
ケネディ大統領が感じ取ったようなことを
読み取ることができるだろうか?
ブッシュさんには悪いけど
それだけの知性は感じられないんだけど。
そう言ったらアメリカ人は怒るだろうか?
ところで、小泉さんはこの本『8月の砲声』を
どう読むんだろうか?

明日は放送日。リストラの明と暗、これはかなり面白い。
見てね!
また明日・・・・・